「マンション管理組合支援事業に参加して」

マンション管理組合支援事業部が発足して3年を迎えた.その間,事業参加会員の真摯な対応の積み重ねや各年の「日経リフォーム博」でのブース展示による広報で,ますます社会的認知度が高まり,問い合わせ物件も急増している.対応案件が増加するにつれ,会員諸氏のご苦労も一通りではないと想像される.また,他の講座開催等の活動と異なり,事業経営的手腕も要求される厳しい活動である.ここでこの業務への一般会員の理解と協力を得る一助とすべく,ご苦労の一端をお聞きすることとした.(編集担当


電気設備診断とサーツの存在意義・・・・五十嵐博一
 電気設備は「物言わぬ臓器」だ。マンションに限ったことではないが、建築物に付帯する電気設備の劣化状況は目に見えない。目に見えるのは電球のタマ切れくらいだが、これは消耗品の寿命にすぎない。躯体ならクラックや雨漏り、仕上なら汚れや破損、衛生設備なら赤水や漏水など目に見える症状が現れるので、住民や管理者が劣化状況や異常を認識しやすい。電気設備は知らず知らずのうちに劣化して、ある日突然、停電や火災を引き起こす。老朽化した家屋が、電気設備の劣化が原因とみられる火災に見舞われるケースは意外に多い。
 電気設備や機械設備の点検には、目視検査と機能検査がある。一般的には、日常の目視検査と定期的な機能検査によって劣化状況を判断する。マンションの電気設備については、電力会社や保安協会が、法令に従って目視検査や機能検査を実施し、必要に応じて予防保全を行っているので、停電事故や電気火災はほとんど発生しない。
 管理組合や管理会社は、「電気のことはよくわからないけど、いつも同じ電気屋さんに任せてちゃんとやっているから問題ない。」という。しかし、何をどうちゃんとやっているかは誰も知らない。ブラックボックスだ。「いつもの電気屋さん」が分電盤の中のブレーカーを逆向きに結線しているのを発見したことがある。間違えたのではなく、その方が施工し易いという理由からワザと正しくない結線で誤魔化していたのだ。「いつもの電気屋さん」の仕事の良し悪しは、素人にはわからない。本当にちゃんとやっているのか、何をどうしているのか、しっかり確認すべきだ。
 素人にはわかりにくいことを、中立な立場の専門家としてアドバイスできるところにサーツの存在意義がある。サーツには各分野の専門家が揃っている。しかし、事業組織としての体制や機動力は企業にはかなわない。マンション管理組合支援事業では、サーツの強みを活かせるやり方で企業との差別化を図る必要がある。建物診断や設計・監理を企業との価格競争で受注するより、監査や監修、セカンドオピニオンとして管理組合をサポートする立場をとるべきではないか。

マンション管理組合支援事業に参加して・・・・向野元昭
 私が、このマンション管理組合を支援するという行為が、世の中で有意義で多くのニーズがあると確信したのは、親戚のマンションの大規模改修の理事会にボランティアで参加した経験からです。その後、サーツで事業化してある程度の収益を得ようとしてからは、いろいろの問題がありその対応に気苦労が絶えないというのも事実です。
 今までの経過の中で、仕事を進める上でカベになったものを考えてみると、
(1) ソフトには金を出したくないというカベ
 これは、日本中に有ってなかなか硬い。サーツはいったい何をやるの・・口を出すだけならサービスだね・・とくる。
(2) 既存業界のカベ
 管理会社、リニューアル業者は、建築に素人の管理組合を相手に今まで割合楽な商売をしてきたので、参入されるのは面倒だ。サーツは、屋上屋ですよ・・・我々で十分です・・とくる。
(3) 管理組合の不統一というカベ
 管理組合の理事の中には、大抵派閥があり意見がまとまらない。また、小さい組合は大きな決定事項を先送りしたがる。
 これらのカベは、案外強固なもので、全てを取り除くことはできませんが、少しずつ実績を積んで突破口を開いていくしかないでしょう。マンションの修繕を通して日本の戦後の住宅の歩みを見て、それを将来にフイードバックできるという技術的、社会的な面白さをこの事業の中に見つけていければよいと考えています。

マンション管理組合支援事業に参加して・・・・ 津田勝弘
 私がサーツのマンション管理組合支援事業に携わるようになったのは、現在,施工業者選定補助業務まで進んでいる「クリエール宮前平」が初めてで、それから数件の経験があります。「クリエール宮前平」は当初、例の姉歯事件から生じた管理組合様の不安から構造計算書の偽造やねつ造がないか検証してほしいとの問い合わせがあった事から話が始まっています。その後管理組合様の方で大規模修繕工事に向けての準備が進んでいるという事でしたので、その支援業務を引き続き私が担当す

管理組合の良きパートナーとして・・・・古橋昭男
 相談事業を2.3件進める内に徐々にマンション管理組合はマンション管理会社の良い収入源としての顧客になっている事がこの業界の実体として明らかになりました。初年度から約40件の相談案件があったのはこのような大規模修繕で管理会社が設計・施工でお手盛りの工事金額に管理組合が高いと気づき始めたことです。初年度は組織的にも管理上も全てが手探りの状態でした。私が担当して感じたことは管理組合の望んでいる事を常に現地の建物の状況から推測してそれ以上の提案、つまり管理会社の提案以上のことを求められることです。設計と施工を分けた方式でも管理組合にコストや技術などのメリットがあれば管理組合がコンサルタントに依頼するようになってきています。単なる修繕だけでなく、その改善の要求の為にスケッチの絵なども描かなくてはならない場合もありました。マンション管理組合支援事業部には各専門分野の知識を持つ方々と意匠設計事務所などの方々が参加しています。顧客のニーズをくみ取るプロジェクトマネージャー的なことは意匠の方が担当し専門的な対応には各分野の方々が組む体制がこの1年の経過を経て理想的な組織であるに感じます。
 445戸のプロポーザルがありましたがこのような時はアイデアやプレゼの表現力も必要なので現役の事務所の能力が必要と感じます。今回は専門分野のスタッフとマネジメントをするスタッフに分かれた体制を組み、サーツの組織力でベストなメンバーで臨んだことが管理組合に期待されたことと思います。
 マンションのストックの時代に入り改修技術や組合側に立つコンサル事業がマンション管理組合支援事業部に求められています。セカンドオピニオンとしてサーツメンバーの個々の能力と組織力を活かし、一般の方々に先端技術や改修技術を広めていきたいと思います。

マンション管理組合支援事業に参加して・・・・丸山和郎
 幸いなことに私の支援活動は、親愛と権威ある先輩方に恵まれ、「個々の建物やその部分の耐久性評価にこそ重要な意味があり、高い技術判断に裏打ちされたものを以って管理組合を支援リードする」という一貫した思想のもとでチーム展開されており、支援が営業目的ではないため契約までの運びは遅いが、管理組合からは絶対的な信頼を得ているものと自負している。
 会誌vol.31新春号では、事業部運営上の問題点を中心としたインタビューが掲載されているが、サーツの技術支援事業のうちの一つである限り、売上げ目標を掲げるような事業性重視の運営方向には私は反対である。むしろ、部内にあっては相互の技術研鑽を推進し、誰もが的確な建物診断評価ができるよう、スタート地点を固める必要があると考える。
 予防保全の名の下に大規模修繕を勧めるような言動は厳に慎むべきである。
 経年の佇まいの建物と竣工図を見るにつけ、常々思うことがある。「価値管理」という極めて抽象的な事業部のキャッチフレーズがあるが、リノベーションだけでなく、建物に託された設計思想も評価する技術支援も、管理組合のステータスを満足させる一つの要素であり、それぐらいのゆとりがほしいと。

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