「前編 サーツの実績と課題/後編 サーツの今後を語る」

8月31日開かれた経営分科会において,「サーツの今後」について討議された.
経営分科会は平成16年8月に始まり,すでに20数回開かれている.委員は阿部市郎,安部重孝,泉清之,太田統士,福本雅嗣,堀井秀治の各氏である.この分科会の主業務はサーツの経営に資するための事業として,例えば,中小建築会社への社員研修用セミナー開催の是非、会員拡張の在り方、すでに実績を上げつつあるマンション管理組合支援事業への支援体制の企画・立案など自主事業の他,外部からの要請に対する対応などについて、企画運営委員会に計るための基礎的検討を行うことである。

今回は表記テーマの重要性から,上記委員に加え,和田章,松村秀一両代表と米田常務,松下常務事務局長代行が参加された.ブレインストーミングの形で話し合われ,現在では特に結論を出すというかたちではなかったが,この課題の問題点,可能性など,分科会で話し合われた内容及び,更に企画運営委員会(10/31)に提出された時の委員諸氏の意見を加え,状況理解の為の資料を補筆して,会員の方々の現状理解の一助としていただきたく掲載致します.

■ これまでの実績と課題:
―― サーツは発足以来丸7年を経過し,8年目に入ろうとしているわけですが,NPOの嚆矢として設立されて以来,「技術の伝承」をテーマとしたベテラン建築技術者集団の活動として,画期的な成功を収めてきたと思います.
―― 設立当初は東大坂本・松村研究室をお借りするようなことでしたが,協会発足以来1年後(2000.1.12),現在の宗文館ビルに事務所を独立した拠点として開設でき,様々な活動が本格化しました. 
―― NPO法人化記念シンポジウム「市民社会と建築技術を結ぶ絆」を皮切りに,一般の方を対象としたシンポジウムも開催してきましたが,「あなたが知りたいマンションの耐震性」(2005.11.18)の時には,その当日,耐震偽装事件が大きく報道され,この事件が引き起こした社会問題に大きく係わる事になりました.
―― 直後から各方面に呼びかけて,構造計算書の審査方法,建築士制度改正へ具体的提言集会を幾度か行ってきました。構造に関する改正基準法に関してはすでに,矢野,最上,安部各氏によるに先駆的な提言を国交省に行っていますが(2001.3),さらに、建築部会長である安部重孝氏は国交省の社会資本整備審議会の建築分科会の委員として参加され、建築基準法改正に向け大きく寄与されました.
―― 具体的な技術伝承の機会として,構造設計者向けイブニングセミナー,住宅関係者に対するすまい・る住宅技術者基礎講座,設計者の為の技術講座,構造技術者基礎講座,施工担当者対象の講座など,多方面に発展的に開催され,延べ受講者数は年間数千名に及んでいます.また個別の会社からの社員教育の要請などもありました.
―― そのほかに,外部からの受託研究や委託研究のサポート,国(国交省)の調査受託などもあります.
―― 問題点は受講者集めにありました.各種団体が中心になって集めてくれるときは良いのですが,一般の広報による場合は講座のあることを周知させるのがなかなか難しい.事業として講座が成立するのに必要な受講者数をどのように確保するかが課題です.
―― 技術内容の点で言えば,会員講師の方は殆どが大手建設会社出身で,中小会社技術者を対象として講座を開いた場合に,その技術格差に驚いておられましたね.
―― 一層,技術伝承の重要さと必要性が感ぜられたわけです.

■ NPO組織としての使命:
―― 一方で会員も設立時以来,会の実績年数と同じだけ会員も年齢を重ねてきたわけで,現状のまま推移すると高齢化とともに組織としての力が今後,弱まることが危惧されます.
―― 発足以来,執行部の入れ替えがなく,役員も高齢化して,このまま継続する事は困難な状況になることが予想されます.
―― NPO組織としては自発的なものであり,一般事業会社のように永続的に事業継続する必要はない.目的とした事業も達成し,発足当初の会員のパワーが衰えたところでNPOとしての使命は終わったと考えてはどうか,という考え方もある。
―― 設立当初,10年を活動期間の一応の目処と想定していたことでもあり,2年後,10年を超える段階で解散するという選択肢もある.
―― 組織継続の為には,大量に退職する団塊の世代を確保し,若返りをはかる必要があります.
―― 今の新しい世代は定年後もそのまま勤務を続けるケースが増えている.外部にも定年退職者の雇用の機会が増えてきて,収入の面でその方が安定すると考えられても致し方ない.
―― 今後の執行部には経営能力があり、且つフリーになって社会貢献しようという意欲的な人材が求められる.
―― サーツ発足当時に立ち返って,人脈を通じ,個別に打診して人材を発掘する必要があるのではないか.

■ 伝承すべき保有技術の抽出,更新:
―― ベテラン技術者の経験知識といっても,技術自体は建設現場では日進月歩で,かつての先端技術も陳腐化してゆく. 指導者側の技術更新(世代交代)が必要であろう.
―― 個人の技術や人脈が有効に機能するのは10年程度かも知れない.  
―― 現会員は好況期の技術者が多く,不況期の技術を学ぶ事も意義がある.技術更新の意味も含めて,現会員を受講者とし,現役を講師とする講習会を定期的に開催するのはどうか.できれば,その講師に会員になってもらって,この講師陣に次代のサーツを委譲するという案もある.
―― 古びてゆく技術といえども,その中に伝承すべき要素はある筈である. 「伝承すべきものは何か」という検討・抽出の必要があり,形式だけで捨て去るのは勿体無い.
―― 姉歯事件における能力不足,モラル欠如の問題に唯,唖然としたり,当然起こりえたという認識があるとすれば,技術以前,或いは技術者のバックボーンの問題として,先達として伝えるべき大事な事があるように思う.

■ サーツの社会的立場:
―― サーツに対する社会的な認知度,評価は高まっている.シンポジウム,セミナーのようなサーツからの働きかけばかりでなく,外部から要望される事が多くなってきた.技術相談に関しては,問題点の範囲が広く,回答方法,フィーの点など漸く軌道に乗ってきたばかりだが,2003年9月に富弘美術館施工者選定に関して審査員の要請が当会にあり,和田,松村,筒井,前田(委員長:和田先生、副委員長:松村先生)の各氏がその任に当たられ,施工に関しても監理を要請され,大きな役割を果たした.その実績から今度は立川市新市庁舎建設の施工者選定方法等検討委員会の委員を要請され(委員長:野城先生[東大]),太田統士氏がその任に当たって居ます.
―― 2005/6 に発足したマンション管理組合支援事業は耐震設計偽装事件の余波もあり,多数の問合せがあり,受注量も予想以上に増えている.
―― これらはNPOの非営利団体としての存在が好感されているからではないか.
―― もはやサーツは単にその存在が認知されているというよりは,建設分野での公正な監査機関として恒常的な存在となっていると我々も認識すべきではないか.
―― 技術の伝承という点で言うと,8年前に比べてIT利用が成熟してきて,技術知識の獲得が容易になってきたという受講者側のニーズの変化も無視できない.
―― WEB Learning に関しては2003年ごろ,当会でも具体的に検討したことがあるが,力,資金不足で断念したことがある.ところがその後,色んな機関,組織がWEB Learningをパワフルに展開する状況になり,当会は単にコンテンツ提供の要請に応ずるだけという状態です.
―― 社会のニーズが変わってきたということを踏まえて云うと,サーツも今までの「技術の伝承」を発展させ,新しい次のテーマを見つけることが必要なのではないだろうか
―― 発足以来のサーツは10年を一区切りとして第1期とし,第2期は現今の社会的,経済的な環境変化に対応する活動内容を次世代の新組織で再出発するという考えではどうだろうか.この1,2年でスムーズに2期に移行できるよう検討を始めるのが良いと思う.
―― 社会のニーズを再確認し,新しい目標テーマを掲げる事,そのテーマの下に次世代ベテランの参集を求め,運営に関しては役員の若返りを図る.第2期のサーツの次なる展開のポイントはこういうことになるでしょうか
―― もし,組織の更新ができないとなれば,終焉を迎えることもやむを得ませんね.
―― 次に若手グループの人達の話を是非,聞いてみましょう.

前掲の経営分科会,企画委員会報告をうけて,執行部以外の若手会員による座談会が開かれ,時期を見据えた活発な討議がなされ,問題点も浮き彫りになったように思います.以下にその内容を掲載いたします.紙面の都合上,内容を一部割愛,圧縮した事をお詫びいたします.

参加者:左より阿部市郎、安部重孝、五十嵐博一,今津賀昭,小須田廣利,菅澤光裕,山本隆史、古橋昭男 (司会)、伊藤誠三(記録)

開催日:12月6日 サーツ事務所
出席者: 古橋昭男(司会),五十嵐博一,今津賀昭,小須田廣利,菅澤光裕,山本隆史
執行部より 阿部市郎常務理事 安部重孝理事    
記録:伊藤誠三(サーツ誌編集担当)
配布資料 特集1掲載文

古橋: 先日の企画委員会に出席したところ,表題のテーマについて,経営分科会で討議された内容が報告され,席上,執行部以外の若い世代の人達の考えを是非,聞きたいということで,その集まりを持つように指名されました.そこで,心当たりの若手の人達に声を掛け,集まっていただいたわけです.今日は討論の継続の意味もあり,執行部から阿部市郎さん,安部重孝さんにも参加していただいて居ります.お配りした資料で現況は分かると思いますが,改めて,阿部常務理事より概略のご説明を御願いいたします.
阿部: 経営分科会は2年ほど前にサーツの今後の施策,中期計画など,経営に関する議題を討議する目的で発足しまして,各部会からの選抜チームで構成され,私が委員長を務め,主査は泉清之さんです.ここでは企画委員会に諮るためのテーマ,例えば,マンション管理組合支援事業の立ち上げについても討議しました.他に,セミナーをもっと積極的に拡大しようとか,地方支部を作って会員増強を図ろうとかなどの経営に関する事項について討議をしてきました.8月の会議ではサーツの存続についての大きなテーマなので両代表にも参加を願ったわけです.当会も発足以来,足掛け8年が経過し,執行部もそのまま8年歳をとりました.両代表と米田常務理事はまだまだお若いですが,執行部の殆どが高齢化してきたので,会の存続を考えると,今後2年位までに若い人にバトンタッチをしてゆく必要がある.次世代では活動の中身を替えるのか,そのままで良いか,替えるとすれば,執行部総入れ替えの必要もあるのではないか.もし後継者が見付からなければ10年目を目処に,解散するのも止むを得ないという意見もでました.現実にはサーツの第3者性ということがますます認められてきており,安部さんがサーツの名で国交省の制度審議会に参加され,公的な立場で力を発揮されるとか,マンション管理支援事業でも多くの支持を得てきており,サーツの存在意義,ステータスも上ってきて居ります.解散という話は最後の手段,現在は皆さんの奉仕的活動のお陰で財政的蓄積もあり,体力のあるうちに次の施策をする,バトンタッチをしてゆくべきと思っています.これらの問題点に関する討議内容を公表して会員の共通認識を求めたいと思っています.私としては,幸いにしてこれまで順調に来たサーツの活動を継続して行くことが良いと思っています.皆さんのご意見をお聞かせ願いたいと思っています.宜しくお願いします.

■組織の運営について
古橋: 今日は経営分科会の安部重孝さんにも出席をお願いしました.今までのサーツのことで我々の分からない点など随時ご発言願いたいと思います. お話はブレーンストーミングという形でご自由にお願いします.幾つかあるサーツの課題のうち,先ず,世代交代をしなければならないが若い人が入ってこないという現状もあり,組織としてサーツを継続してゆくにはどうしたらよいかという点につきご意見をお願いします.
今津: 私は若手グループではないのですが,サーツ解散という意見があることを知り,この座談会に参加させていただきました.ステータスも高まってきたとはいえ,実質6年で,漸く軌道に乗ってきた今,やめる話はないと思います.人の入れ替えがなく,高齢化で硬直化してきたのは実感していますが,元々,定年退職した高齢の人を対象にしてきたわけですし,止むを得ない点はあります.唯,同世代の似た経験者だけの集まりというのは風通しが悪くなる傾向があるように思います.世代にこだわらず,若い人にどんどん入ってきてもらって,お互いにメリットを見つけて行くという必要があると思います.ベテランは現実のニーズを知ることができ,若い人は幅広い人脈,資料を得て自分自身の幅が広がるというように.その点,この会の生みの親でもあります米田さんがうまく実践してこられたように思います.多くのベテランの協力を得て,ご自身のテーマを昇華させて来られた.今後は会員の年齢の制限をなくし,技術伝承を内部でもやっていくということが必要と思います.
古橋: ベテラン層と若い層がサーツで接点を持つという事は重要なポイントのように思います.その点,我々も同じでサーツの場を利用するという考えも良いのでしょう.菅澤: 私には同世代の方が少ないのですが,例えば,団塊の世代を取り込むというような工夫がされていないように思います.対外的には正会員の紹介が必要とかの会員資格があって,ハードルが少し高いのではないでしょうか.私の会社でお誘いしても,会員の顔ぶれだけでたじろぐような人もいます.ハイレベルを維持するという選択肢もありますがそういう人達はご自身で仕事をしている人が多いでしょうし.
古橋: マンション管理事業の集まりでも,こういうメンバーで構成されているという説明で,それだけで信用されるという事もあり,先方にゼネコンの方でも居られると,良く知っていますと身構えられる事もあります.賛助会員という制度もあり,門戸は広げられていると思いますが,確かにハードルが高いという感じはあるのかもしれません
菅澤: 私自身は顔ぶれを見て,いい話が聞けるのではないか,伝承されたいという気持ちでした.たまたま,身近に委員の方が居られたので推薦してもらい,入るすべがありましたが,若い世代はどのようにそういう人を見つけるのかという問題があります.
五十嵐: 私は昨年12月に入会して,今42歳,まだ現役です.会員を増やすという話が出ましたが,事業体として100人を越えた組織を管理するのは大変な事です.人数をやたらに増やすのは危険だと思います.単なる会費徴収のための意味での会員増強は不味いでしょう. ただ,NPOが入会制限を加えているのは法的に問題があります.活動内容では,ボランティアの部分と報酬を得る部分を明確にする必要があると思います.今年設立された地震保険の会社からサーツの協力を得たいという話しもあり,是非,サーツの活動は継続してもらいたいです.
古橋: 現在,会員総数は130名を越えるのに日常的に活動されているのは30数名ぐらいだろうと思います.営業的に名前を借りただけのようなところはないか.皆さんが参加できるというのと現実にはひずみがあるのではないでしょうか.
阿部: 今年の集計はまだですが,源泉徴収表をお渡しした人の総数はおよそ6割になりますが,常時活動していただいている方は30数名に留まるかもしれません.会費納入していただくだけでなく,実際に活動していただくことが活性化に必要だという話は出ておりました.
伊藤:会員総数のうち,大学の先生方や公共団体に属している人,会社に現役で勤務しておられる方など,現在は,立場上,実際のサーツの事業に直接参加できにくい人が40数名に上ると思います.休眠会員のような人はそんなに多くはないのではないでしょうか.
古橋: でも入会の時には2名の推薦があったわけですから,その方々に活動の場を提供できなかった点は反省点としてあるでしょう.
小須田: 会員構成を考えると,退職してボランティアで技術伝承をしたい人,企業に勤めている人,自分で会社を経営している人等があり,サーツ事業に対するスタンスに差があると思います.マンション部会で顕著に現れたことですが,報酬ゼロがサーツの形であるという人と,事業収入が要るという立場の人とは一つにはなりにくい.無償で技術伝承だけを考えるグループと経営的に組織管理を考える二つのグループでどういう組織維持ができるか,会員構成を考えるヒントがあるように思います.
古橋: NPO団体でも経費ゼロでは組織が成り立たない.手弁当でやる事に誇りを持っている人もいるがそれではやってゆけないという意識改革が必要でしょう.執行部の方々は経費が必要という事は強く認識されているけれど,全員に確認されているかというとその点の関心に乏しいのではないでしょうか. 
阿部: サーツ設立時,ボランティア活動を主力に積極的にやるという話しもあったけれど,事務所を構えるとか様々な経費が要るので業務報酬を得てゆくという方針でやってきました.業務報酬規定も内規として作り,皆さんに徹底してきたつもりです.外部の研究委託を取得する等してだんだん発展してきました.会員の中では色んな立場,技術の人がいて活動の手段もいろいろあるので,それらを全部包含してゆくのが良いと思っています.事務所運営も給料は安く奉仕的に,但し,報酬ゼロではないという事でやってきました.但し,今後は半ばボランティア精神でやってゆくような人がいないと事業をして続けていけないでしょう.事務所があるから集まれるわけで,その維持は必須です.将来像としてはきちんと財政的な基盤を整える事は重要なことです.古橋:利益はでなくても意義あることは多く,それをやめるというわけには行きませんし,管理組合支援事業でも,始めの予定より客先の希望が拡大して,利益を生むというわけには行かなくなる場合も多い現状です.話が事業性に偏りましたが最近入られた山本さん,組織の運営について何かお願いします.
山本: 最近入ったばかりなのですが,外から見ていたサーツはNPO団体で建築技術支援といって,具体的に組織の活動が良く見えませんでした.中から見ると,現在は古橋さんに付いてマンション部会のほうに参加していますが,サーツはフィルードがあまりに広くて自分の身の置き所がよく分からないような状態です.活動を見てもそれぞれが少人数で,組織化されていないし,やり方も異なる.機会を作るのか待つのか考えているところです.
古橋: 会員の方はそれぞれ部会に属しているわけですが,具体的なテーマがないから来られないというような問題点も今後の活性化を考えるのに重要なポイントと思います.
次に今後,組織はどうあるべきかについてお話御願いしたいと思います.

■組織の姿について
今津: 今の組織をがらりと変えるのは望ましくないと思いますが,現両常務理事が退任されるとすれば,これを機会に新しい常務理事の役割分担を明確にするのが良いと思います.事業部担当,企画担当それから,できれば総務担当の3つにする.
古橋: いままでも理事の役割分担はあったと思うのですが,その点はどうでしょうか.
阿部: 分担は,建築と総務は米田,住宅と渉外は阿部といったおおまかな分担をして,協議しながら進めてきました.
安部: その前に議論のあった人の問題でお話したいのですが,講習会の講師など外部の方にも協力講師としてご参加をお願いしていますが、そんな方にも会員となっていただければと思います.また、今まで活動に参加していない会員お方で、力を持っている方に活動への積極的参加も期待したいと思います。一つの例ですが、長崎の耐震診断の講習では太田勤さんにお願いしました。会員外の人も含めて,技術力のある方をどのように見つけ引っ張り出すかということを考えねばならないと思っています.
今津: 自分の専門ではないので担当できないという人も多いのですが,サーツには沢山専門家がいるのが強みなので,内部で聞く事ができます. 
古橋: 各部門の専門家がいるのが誇りです.マンション管理支援の実務でも良くその話が出て,客先の納得を得るのにどんな事でも答えられるというパワーは大きいのです.その点について伊藤さん何か
伊藤: 各方面の専門家はいても各部会に別れていて相互の交流が少ないのが現状です.総合力と外部で言う前に,内部で総合力の確認が必要なのではないでしょうか.専門分野で旗印をあげるだけでなく,相互に総合力を高めるための内部での検討会の必要があると思っています.
菅澤: 総合力の点で伊藤さんに賛成です.歴史研究会,銘酒の会などで部会の違う方と交流できるのは新しい刺激です.横断的な活動の方法を考えるのも良いのでは.また,組織には旗振り役が必要なので, 次の理事は名指しで指名して育て,少しずつ世代交替してゆく方法が現実的ではないかと思います.
小須田: マンション管理支援で設備関係の問題がありましたが,自分は設備の人間ではないのですが,向野さんのお陰で仕事ができた.総合力のお陰と思います.それとは別に林野庁に提案している企画があります.個人ではできないが,安部さんが言われたような人集めで総合力のポテンシャルを高めれば事業化は可能になると思っています.
古橋: 組織の継続について新しい五十嵐さん何か
五十嵐: 勿論,継続すべきと思っています.徐々に世代交代を進めるべきでしょう.先ほどからの話を聞いていて,自分のスタンスや積極的に貢献できることを考えたいと思いました.
古橋: 山本さんは今まで大企業に居られてNPOの組織をどう思われますか?
山本: 事業の大原則の中でしか育っていないので全くのボランティアという考えは難しいのです.事業の中でやることが原則と思います.この組織の中で稼ぐ部分と奉仕する部門がどのように合体してゆくのかまだ良く分かりません.
今津: 外向けのボランティア精神とともに,内部でもボランティア精神がないと駄目だと思います.
阿部:常務理事として運営して行くためには 本人にボランティア精神と公平性が重要です.また会員の考えも事業性のみ,ボランティアのみと人の考えが分かれるのも難しいと思います.執行部総入れ替えの話も出ましたが,職務が人を作るという面もある.徐々に交代というのが現実的かもしれません.
古橋: 今までの話を総括するとサーツの組織は残すべきであり,理事の若返りを段階的に行うということになろうかと思います.続いて,新しいサーツにしてゆこうという時,サーツの理念についてはどうか,口火を安部重孝さんに御願いしたいと思います.

■サーツの理念について
安部: 新しいもの,魅力あるものにしようと考えるとき,古いものは受け継ぐ必要はあるでしょうが,最初の設立時の理念は、10年をひと区切りと考えて次の本会として見直してもよいのではないかと思っています.
古橋: 事業の対象として市民向けのものと専門化向けのものがあります.阿部さん,事業の点でその見通しはどうなんでしょう.
阿部: 専門家向けのものはここ2,3年尻つぼみになってきました.これらは企業向けの新人社員育成用であり,会社が景気の状況から経費をしぼってきたためではないでしょうか.最近はやや人数を持ち直してきましたが. 別に,寺子屋などは見直す必要があります.
安部: 技術者向けの講座も受講者が減ってきました.そこで新しく,市民向けの「耐震偽装を超えて」というテーマでセミナーをやろうと企画しています.専門技術的なものを市民に分り易く知らせるという講座です.市民向けの寺子屋もいいのではないかという考えもあります.但し,市民対象は当会の収入には貢献しないという恐れはあります.
古橋: 会員の中には専門的なことに限ろうという人もいますが,専門的なことを市民に啓蒙するということですね.新しい事業の考え方としてどうでしょうか.
今津: 発信するばかりで聞こうとしなかったので,ニーズが違ってきているのに気が付かなかったのではないか.社会の新しいニーズに対応する努力が必要でしょう.SOHO事業家を会員に取り入れてゆくことも可能性の一つです.外向けの活動をするためには,会員自身の専門領域の拡大を目指す事も考えたいことです. 
菅澤: 自分が入会した時,面白い話が聞けそうだという期待の他,自分は何ができるかと考えたとき, 私は社内教育に関係していたので,一般への何らかのスピーカーになれるかなと思っていました.今のところ,ベテランから若手への伝承はまだ充分ではないと思うし,一般の方へ啓蒙活動もお金が取れないので,寄付をうけるなど,何らかの工夫が必要と思います.その点,マンションの耐震性は一般にアピールしたよい事例だと思います.それから,サーツの理念は変えるべきではないと思います.創業時の理念を持ち続けている会社がエクセレントカンパニーだという事を本で読みましたが,NPOも同じではないでしょうか.周りのニーズの変化への対応には 活動方針を変えれば良いのです.今までは自分たちが持っているネタを提供するのが主でしたが,それが現在のニーズに対応しているかどうかという検討は必要と思います.
小須田: マンション支援事業の中でサーツは手弁当でやるべきで,お金を取るというのなら,サーツの理念と違うのでサーツ外でやれば良いといわれたことがありますが,そのような意味ですか?
菅澤: 事業として無償ではできないでしょう.正当な対価が支払われるべきであると思っています.
今津: NPO法人法では会計を特定非営利事業会計と収益事業活動会計の二つに分けろといっています.
古橋: 決算の経営的処理について年度末に,検討するつもりです.五十嵐さん,理念については?
五十嵐: 理念を変えずに活動方針を変えるという考えに賛成です.技術の伝承は理念ですが,寄付を受けない事は理念ではないでしょう.また,法人として利益を得ることと,個人として報酬を受ける事は別です.個人が手弁当で活動しなければならないのなら,法人として成り立っていないという事だと思います.
阿部: おっしゃる通りだと思います.株式会社としては成り立たない事で,今まで各人の奉仕精神に頼っていました.今後はアメリカ型の組織に到達すべきで,自己満足ではいけないと思っています.
山本: 報酬の点,労働の対価に対してはすでに言い尽くされていますが,内向けの理念としてとして明確にしておく必要があると思います.それが活動のブレーキにならない様,望みます.
安部: 先ほど話した理念のこと,(設立趣意書はあるが、理念として明記されたものはありません。設立趣意書の中にある)理念の確認は必要と思います.
古橋: そろそろ時間が来ましたので今回はこの辺で締めくくりたいのですが,最後に一言をどうぞ,
今津: 漸く収益を得ることができる永続的な事業ができたことは喜ばしいことだと思います.皆でしっかりと育ててゆきたい.
菅澤: サーツは存続して行かねばならない.今まではなかった第三者的組織としての存在が建設業界に必要であると思っています.
五十嵐: 日頃会うベンチャー企業経営者はみな30代です.サーツではベテランの方々が活躍しており,42歳の私が最年少,世の中は広いなと思います.
小須田: 今日,山本さんが福祉施設の専門家であると知って是非,聞きたい事があります,このように人脈の幅が広がるのが嬉しいです.
山本: 総合力について,メンバーの力をどう生かすかという事をテーマにして欲しい.変わってゆく過程を皆さんに知らせる必要があると思います.
古橋: 会員として新しい方が,人材が勿体無いと感じられた事は今までなおざりにされてきたことかもしれません.皆さん,長時間どうもありがとうございました.

座談会後記:問題のポイントが絞られて良い討論になったと思います.今回は日程の都合もあり,限られた方々の集まりだったので,更に,多くの方々の考えを聞く機会を持ちたいと思います.伊藤誠三 記