「工事管理者に望まれるコンクリート基礎知識の習得」・・・・・岩瀬文夫


 コンクリートとは一言で言うと「人の手で造りだす石」です。セメントと水、砂(細骨材)、砂利(粗骨材)を練り混ぜたもの(生コン)を、型枠に詰め込んで固めたものですが、「細骨材」と「粗骨材」はもともとが「石」ですから、「セメントと水(セメントペースト:珪酸カルシウムを主成分とするガラスのモト)」を空隙が生じないように密実に固めることができれば、コンクリートは強固な質の人造石となります。このセメントペーストの硬化の仕方は、「材料の品質」、「打設方法」、「養生方法」によって異なるため、特に工事管理者はこれらの材料、施工、に関する知識の習得が欠かせません。

 近年はコンクリート構造物が高層化したこともあり、埋設鉄筋が増加(密集)するなどで型枠の隅々まで生コンを行き渡らせることが難しくなっています。その結果、ジャンカや空洞を生じさせることなく生コンを打設(充填)するために、流動性の優れた柔らかい生コンが求められる傾向があるようです。また、短めの工期で工事が行なわれることも多いため、本来セメント水和結晶を密実に成長させるために不可欠な「型枠解体後の養生」はほとんど実施されていないようです。このような環境下においてコンクリートのひび割れが防止できないのは、むしろ「当然のこと」といえるかもしれません。

 現在はコンクリートの品質向上のために「生コンの単位水量を測る」、「石灰石骨材を採用する」、「充填性の優れた新材料を開発する」など、材料面の対策ばかりが強調されていますが、最も肝心な「施工」は一体どこに消えてしまったのでしょうか? 施工のしやすさばかり追求しておきながら、「硬化コンクリートの品質は生コンの質次第」と言うわけには行きません。

 私は、コンクリートの乾燥収縮ひび割れを防止するために、施工に関して次のような提案を行なっています。すなわち、「口径50mmのバイブレータを用いた充填作業」、「柄の長いバイブレータを用いた再振動締め固め作業」、「できるだけ長期間の湿潤養生」などです。また以上のような施工の効果を高めるために、材料(生コン)について、「水セメント比50%以下」、「単位水量170kg/m3以下」、「細骨材率40%以下」、「スランプ12cm以下」(これらはいずれも小さいほど効果的)などを併せて提案しています。これらの根底には、明治の先人たちが既に提案していた「コンクリートは強度と言うよりも密度を高めることが大切である」という一貫した考え方があります。

 高耐久のコンクリートを造る上で施工の果たす役割が如何に大きなものであるかを示す例としては、明治時代に造られた小樽港防波堤のコンクリートを挙げることができます。現在よりも品質の劣るセメントを用いていながら、築後130年を経過した今日においてもその役割を立派に果たしているわけは、「丁寧な施工(打設作業ならびに養生作業)を実践していたからこそ」なのです。  なお、私は「躯体コンクリートの品質確認」のために、躯体から小径コア(直径30〜40mm、長さ100mm程度)を採取し、その密度(見かけ密度:単位体積質量)及び強度を試験することも併せて提案しています。施工を丁寧に行なうほど生コン中の空気や水を追い出すことができ、コンクリートの密度及び強度は向上します。一般に密度の高いコンクリートほど内部に空隙が少なく、外部環境の影響を受けにくい高耐久のコンクリートといえます。

 現在は躯体コンクリートの品質検査が実施されていないため、採用している施工法の問題点が見えにくくなっています。建物引渡し前に「コア採取による実体の品質検査を必ず実施する」など問題点を明らかにして、施工法の改善に取り組んで頂きたいものです。

コア採取作業の様子及び採取コア