■「建設業の新分野進出-挑戦する50社-」
■ 編著/米田雅子
■ 出版社/東洋経済新報社
■ A5判 183頁 = 1,500円+税

 現在、建設業界は不況の最中にあり、各社は如何に仕事を確保し生残るか日夜腐心している。資金力や人材など経営資源がある大手建設会社にも厳しい時代であり、比較的それらが少ない中小の各社は死活問題でもある。
 このような情勢下で本書は、中小会社に現状打開の方向方策を示唆し、時代の要請に合致した本である。本書は2部構成で、第1部は仕事量減少が一過性では無い事。すなわち、時代の趨勢として我国の建設工事の全体量が激減すると共に工事内容がリニューアルなどに変化する事が客観的に記述されている。具体的には、国際情勢に応じた公共工事政策の変換、経済情勢の変化に伴う建設投資額の減少と投資内容の変化、年齢構成の少子高齢化推移や環境・リサイクル重視の社会情勢で建設への要求内容変化、等々が裏付けデータと共に紹介されている。したがって、現在の建設不況は未だ序章に過ぎず、中小会社の生残りには根本的対策が必要である事が読者に自然と認識される筆運びとなっている。
 第二部は、限られた保有資源や地場をベースとした中小各社による新分野の開拓事例が、農業、林業、水産、環境・リサイクル、介護・福祉、建設関連、IT・その他、と各分野で紹介されている。各社の進出内容は、夫々が保有する技術・人材や地域密着の利点を生かした結果であり、地道に一歩ずつ血と汗を流した努力の積重ねの現状成果である。共通点は、大手ではでき得ない小回りの良さの活用、地元や社会への寄与を念頭、限られた経営資源を有効活用、不足するノウハウ・専門知識・施設などは地元の自治体や大学・高専と連携、であり一事例2頁で紹介されている。
 各社の活路を見出すヒントが随所に散りばめられており、不況脱出を志向される中小の経営者の方々が座右の書とされる事を期待したい。(野嶋治)