「最近読んだ本」 ・・・・吾川正明


■ 論評 建築界を考える/著者:橋本喬行
■ 出版社/(株)日刊建設通信新聞社
■ A5判 322頁=1,800円(税込)

 建築の仕事はこれから大きく変わります。かつて、新たな日本の都市や町の姿を夢見て新規建設の実務や技術開発に汗を流してきたサーツの皆さんが、マンション管理組合による大規模修繕の技術支援に取組み始めているのは、その大きな変化を象徴する出来事だと思っています。

 その大規模修繕やリフォーム、リニューアル、リノベーション、コンバージョン等と呼ばれる分野は、このように色々なカタカナ用語が踊ってはいますが、まだまだよちよち歩きの段階です。学術的な裏づけも、人材育成も、技術開発も、制度インフラ整備も、何もかもが現段階では薄っぺらで、取組まなければならないことは山ほどあります。その一方で、最近の学生の様子を見ていると、新築ではないそうした分野こそが自分たちの仕事の場だと思っている人が明らかに増えています。  数年前に、先ずは不完全でも良いから、早くそうした若い人に、新しい分野の枠組みとその豊かな可能性、そして習得すべき事柄の全体像を見せる最初の教科書のようなものを作るべきだと思いました。そこで、サーツ会員の安孫子さんや清家君たちにも集まってもらい、教科書作りとしては比較的超特急で作ったのが本書です。そうした意図を持つ類書はまだないと思います。

 本書を通して、建築再生という分野を単なるメンテナンスとは異なる創造的で魅力的な分野にすることに貢献できればというのが、著者全員の強い思いです。本書を手に取って頂き、そんな思いが広く伝わるようになれば、こんなに嬉しいことはありません。