■ 「実用建築施工図」
■著/大野隆司 ■監修/中澤明夫 他
■出版社/市ヶ谷出版
■A4版 141頁 =3,400円+税

 建築における施工図は、もの造りの上からは非常に重要な情報伝達の道具として活用されるものである。しかしながら、現状の建築施工着手段階では、この施工図作成の基となる設計図書内容が必ずしも十分でなく、設計技術者の手から社外の専門技術者に大部分委託されたり、また出来上がった図面で施工する技術者においてもその内容検討理解が十分でない状況で工事が進められていたりしているのが現状であり、一部にはこの問題を何とかしなければの意識が高まっている事は事実である。
 このような状況の中で、これら技術者にとって今求められているのは、如何にこの施工図を早く確実にまとめていくか、図面に何が具体的に表現されていなければならないかを理解し対応していくことである。
 このたび発行された表記図書は、これらのニーズを十分に認識し実践を担当されている方々が努力しまとめられた内容になっていると思う。具体的な詳細を一つ一つ説明するレベルは、別の参考書に譲るとしても、施工図に関わる関係者がそれぞれの役割を認識し、基本となる施工図に対して如何に取り組むべきかの観点で具体的に説明が加えられており、これからのもの造りを指向していく上で施工図は大いに参考とすべき内容と考える。
 現状の施工図は、それぞれ忙しさに紛れて必ずしも十分な検討になっていない面も有るかと考えるが、建物の品質確保が叫ばれている現在、今後も品質の確保からはおろそかに出来ない重要な情報伝達の道具であり、図面を造る側も使う側もこの事を再認識し、技術の伝承面をも考慮し取り組んで行ってもらいたいと考える。(柳川 裕)