自著によせて・・・・岡部知子

■ 三代もつ木の家を直営でつくる/著者:平山友子・岡部知子・高橋昌巳

 それは、「家づくり」というものに何故か興味をもってしまった私自身に育った極々素朴な心の整理であったのかも知れない。当時に生きていたわけではないが、敗戦以後のわが国が大きく軌道修正された結果、世界でも有数の経済大国となった。物質文明・合理主義・・これらを否定して生きるほどのエネルギーがあるわけもないが、このことを述べておかなければあとの文章が書き辛い。「一戸建て」と称される身近な住み家は二分された。元来の木造家屋と新建材を基としたハウスである。

 家業を手伝うようになったおかげで、家づくりに関するスタイルと立場の異なる多くの人々に出会ってきた。建主としての情報量が最初に出会った関係者と築く協調姿勢が「家」の完成度を決定する。このことに於ける結果は実に様々である。地域での情報がしっかりしていた頃には当たり前であった各職人と建主が直接契約する分離発注方式がある。これは建主側に建築に関する知識がある程度要求されるが、メリットとして準備資金の流れが明確になり、建築には付き物のブラックボックスがないという利点がある。そして、建主が各職人と直接打ち合わせて進行させるために、引き渡し後のクレームもほとんど発生しない。しかし、要は「設計士」といえる。熟練度が高く、包括力のある「士」が望まれる。図面に「土壁」と描くだけの指示では現場の左官職人も元気が出るはずもない。工法・素材にこだわり、完成までの工程に気を抜く気配は微塵も感じさせない設計士に出会うことができた。シティ環境設計の「高橋昌巳」さんが「本物」を求めつづける姿勢に感服し、この本の制作に参加した。家づくりのすべてを掲載した内容が、明日の「建主」のお役にたてることがあれば幸甚に尽きる・・。

■ 出版社/ エクスナレッジ ■ A5版 273頁=2,310円(税込)