■「21世紀型住宅のすがた」
■ 監修/松村秀一 田辺新一 編著/ハウスジャパン・プロジェクト
■ 出版社/東洋経済新報社
■ A5判 267頁 = 1,600円+税

 主に新刊を紹介する本欄で二年ほど前に刊行された本書を取上げるのは異例なことだが、サーツ代表理事の松村先生の監修で、多くの会員が直接間接に関係した本書を紹介しておこうという編集部の意図のようだ。本書は生活価値創造住宅開発プロジェクト(ハウスジャパン・プロジェクト)」の研究開発成果をまとめたものである。ハウスジャパンは1994年(平成6年)に関連業界38社が参加して設立された技術研究組合で、そのプロジェクトは経済産業省(当時)が指導する国家的規模であった。
 オールジャパンの住宅技術プロジェクトとしては、ハウス55や芦屋浜プロジェクトが思い起す方が多いだろう。1970年代以降、国が公団などを使いながら直接的に技術開発をリードする戦略から、民間に蓄積された技術を総合化し実用性を高める方向に変わっていく。ハウスジャパンもその延長にあったといえる。しかし、バブルがはじけた後であり、非成長社会としての21世紀が見えた時だけに、それまでのプロジェクトとは違った取組みがされている。
本書は開発成果を4章に分けて紹介している。1章「住宅の性能表示・評価技術の開発」では、多様化するライフスタイルに対応して、生活者に分かりやすく技術内容を表示しようというもので、成長期にはなかった取組みである。2章「住宅の生産合理化・長寿命化技術の開発」では、合理化によるメリットをリサイクル性や耐久性の向上につなげようとする開発が多く、ストック時代を反映している。3章「住宅の快適性向上技術の開発」では健康の問題が第一に置かれていて、ひたすら快適性を求める姿勢ではない。4章「住宅の省エネルギー技術の開発」は単に新技術の開発ではなく、そのインテグレートが論じられている。
 21世紀の住宅像の提案としては少し弱いかもしれないが、諸技術の総合化・実用化に主眼があるだけに、本書は新技術に関する試作実験結果の付いたのカタログ的な意義を持っている。(鎌田一夫)