■ ストップ ザ・ヒューマンエラー100
■著者/笠原秀樹(正会員)
■出版社/鹿島出版会
■B6版・141頁=1,500円+税

 古くから建設現場は災害の多い職場だといわれてきた。労働安全衛生法が制定され、仮設足場を始めとする各種安全用資機材の大幅な改良、改善、発明があり、一昔前に比べて大幅な災害の減少がなされてきた。しかし災害件数はある一定の件数まで減少したあと横這いとなり、作業者の間違い、いわゆるヒューマンエラーをなくすことがさらなる災害の減少に結びつくと言われている。
 本書は建設現場で長年実務に携わってきた著者がヒューマンエラーに関する作業員の知識のなさ、又建設災害のヒューマンエラーに関する本がほとんどないことに気づき、数多くの災害事例や関連資料からヒューマンエラーに関わる話を100題集め、簡潔に読みやすくまとめたものである。
 本書で著者は「情と報」との題で「「報」はその気になれば誰でもどこからでも入手できる公開された情報
で、その量と早さが生命であり、「情」とはフェイスツーフェイスコミュニケーション、つまり人と人が直接介在することではじめて発見され、入手可能になる情報で、量より質が重視される。建設工事の現場の中も情報化社会で毎日多量の図面や指示が流れています。図面や指示書をきちんと届ければ工事はうまく進むでしょうか。
 それは「ノー」です。工事を円滑に進めるためには図面や指示書のような「報」だけでなく、そこに人と人とのコミュニケーションである「情」がどうしても必要なのです。」と述べている。
 近年IT革命と呼ばれる驚異的なインターネット等の普及が建設業界に変革を迫っている。設計から見積もり、受発注、施工図、工事の打ち合わせ等をネットでやりとりする仕組みが考えられ、急速に広まろうとしている。この仕組みに、著者が述べているように単なるインフォメーションのやりとりだけで無く、「情」を加えることは今後大変重要と思われるが如何であろうか。
 本書は実に巾広い分野から話題が集められ、現場の安全訓話のネタ本としても好評なのもうなずけるものである。(内藤雅義)