■「図解 新築工事の進め方・木造住宅」
■ 監修・執筆/深尾精一  執筆/福本雅嗣+栗田紀之
■ 出版社/市ケ谷出版
■ B5版208頁 = 3,000円+税

 社会的背景や要請を受けて、ここ数年の住宅工法や設備の変化、関連法規改定はめまぐるしい。本書は工業高校のサブテキストを意図したといわれるが、最新の法改正や業界の動向を踏まえて、経験豊かな執筆者により解説された親切なガイドブックとしてお勧めしたい。まず、文体が平易で歯切れよくロジカルで分かりやすい。序章では木造軸組み工法の課題や生産体制の変化にも触れ、木造軸組みの住宅供給が現在おかれている状況が良く分かる。
 また、モデル住宅を選び写真を使って、着工準備から引渡しまで写真を多用しながら工程を追って要領よくまとめられており、実務経験が豊富でないと見落としやすい細かなことで、施工上大切な注意点が随所に述べられているのが良い。特に、地業・基礎工事、躯体工事については構造体とアンカーボルトの位置関係や構造用金物などの施工方法とその構造強度上の理由が簡潔に述べられており、工法についての理解を助けている。
 さらに、公的検査の流れ、地耐力と基礎・布基礎、基礎の鉄筋とかぶり厚さ、面材耐力壁の種類、など構造に関する部分、墨付け合印等が表にまとめられており、豊富な写真と共に実務上も使いやすくまとまっている。
 一読して、大工見習いや、新入施工管理者のオリエンテーション、或いは数ヵ月後の再研修のテキストとしても有効だろう。流れるような解説文はそのままビデオテープを見る趣があるが、大工職の教育のためにはビデオが別売されれば万全だと思う。欲を言えば、仕口、継ぎ手についての図版がもう少しあればなお良かった。また、いったん読み終えた読者の実務上の有効性を考えると、工程ごとのいたるところに触れてある細かな、しかし大切な注意点について、欄外または文の末尾に※印をつけてまとめれば、本文から探さずに済むため大いに助けになると思う。現在進行中の改正法案もあるので本書が順次改定されさらに有効性を高めることを期待したい。(中村正實)